『プリースト 悪魔を葬る者』で、アガトは何を歌っていたか

『プリースト 悪魔を葬る者』に出てくる外国語のテキストを翻訳するブログです。

聖歌のタイトルと歌詞 +追記

みなさんこんにちは、Dicaです。

この聖歌の存在を言及すること自体がすでにネタバレなのかな、という心配もありますが…

これから先はネタバレを含みます。十分ご注意ください。OKな方はどうぞ。

 

 

※ここからはネタバレを含みます

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず、アガトの歌った聖歌のタイトルは 'Victimae Paschali Laudes'と言います。

「ヴィクティマエ・パスカリ・ラウデス」と読みます。

ラテン語の勉強をしたことがある方ならお気づきかと思いますが、

Victimaeの発音が「ウィクティマイ」ではなく、「ヴィクティマエ」ですね。

それは、学校で一般的に学ぶラテン語が「古典ラテン語」なのに対して、

協会で使われているラテン語は「中世ラテン語」だからです。

現在のイタリア語により近いバージョンですね。

 

それでは、ラテン語の歌詞と訳です。(出典 wikipedia 

ヴィクティマエ・パスカリ・ラウデス - Wikipedia

 

youtu.be

 

Victimae paschali laudes    過ぎ越しのいけにえに
Immolent Christiani.     賛美をささげよ、キリスト者たちよ。

Agnus redemit oves     子羊が羊を贖い。
Christus innocens Patri     罪のないキリストが父に
Reconciliavit     罪びとたちを
Peccatores.     とりなされた。

Mors et vita duello     死と命とは戦い
Conflixere mirando,     驚くべき仕方でぶつかりあう。
Dux vitae mortuus     命の王は、死ぬことで
Regnat vivus.     生きて治められる。

Dic nobis Maria     マリアよ、私たちに告げよ。
Quid vidisti in via?     あなたが道で見たものを。
Sepulcrum Christi viventis     生きているキリストの墓を
Et gloriam vidi resurgentis.     そして蘇られた方の栄光を、わたくしは見た。

Angelicos testes     証しする天の使と
Sudarium et vestes.     布と服を。
Surrexit Christus spes mea     私の希望、キリストは復活し
Praecedet suos in Galilaeam.     ガリラヤに行き、待っておられる。

Scimus Christum surrexisse     私たちは知っている。キリストが
A mortuis vere.     真に死から立ち上がられたことを。
Tu nobis victor Rex     勝利の王であるあなた、どうか私たちを
miserere.     あわれみたまえ。

 

 

以上です。

Victimae以外も、古典ラテン語と発音が異なるところが何か所かあります。

(Agnus アニュス・innocens イノチェンス・resurgentis レスルジェンティスなど)

ちなみに映画のバージョンからは「surrexit」「surrexisse」のrrをlに近く発音するなどのミスも見当たりますが、韓国語ではrとlの発音を区別しないので、普遍的なミスといえます。

私の未熟なラテン語の知識で、この歌詞の文法を分析したこともありますが

もし機会があればアップロードしたいと思います。

 

あと、歌詞の意味について少し解釈をつけますが、

3行目の「Agnus redemit oves     子羊が羊を贖い」のagnusもoves(原型:ovis)も意味は羊ですね。「一体どう違うの?」って戸惑ったのを覚えています。

agnus(子羊)はキリスト教ではイエス・キリストの象徴だそうです。

よく聖歌に出てくる「神の子羊」がまさにこれのことです。

ovesは「羊」を意味するovis(女性名詞、3変化)の複数対格、

つまり「羊たちを」になります。迷える子羊と言われる、民衆のことですね。

 

ごらんの通り、この歌はイエスの復活を証言し、賛美する歌で、

映画の中では「一回逃げた」アガトが「帰ってきた」のと、

「川に落ちた」彼が「生きたまま戻ってこられた」ことを連想させる、という意見も多かったです。

何はともあれ、美しい聖歌だと思います。

 

+追記 '16.11.01. 18:13

 

この聖歌は、聖歌のなかでも特別なポジションを取っています。

「続唱(Sequentia, セクエンツィア)」と分類され、特別な日にだけ歌われます。

内容的に、当然復活祭のミサの日になります。

メロディをつけて歌う教会もあれば、歌詞を読み上げるだけの教会もあります。(実家の近所の教会はそんな感じでした)

このようなセクエンツィアは現在5つ残っており、あと4つは以下の通りです。

 

聖霊降臨祭のミサのための "Veni Sancte Spiritus"「ヴェニ・サンクテ・スピリトゥス(来たりたまえ聖霊)」
聖体の祝日のミサのための "Lauda Sion"「ラウダ・シオン(シオンよ汝の救い主を讃えよ)」
レクイエムのための "Dies irae"「ディエス・イーレ(怒りの日)」
聖母マリアの祝日のミサのための "Stabat Mater"「スターバト・マーテル(悲しみの聖母)」

 

詳しくはウィキペディアの「セクエンツィア」のページをご覧ください。

セクエンツィア - Wikipedia